シキ:
(ポタポタと垂れる水音、いやに響く足音。充満する鉄の臭いは、錆ついた配水管か、それとも自分の体内から熱く流れ落ちる赤い液体か鉄といえば、体が恐ろしく重く、眠たい。どれほど歩き続けたのかわからない。数日かもしれないし、あるいは数時間かもしれない深夜のうちに成増の下水路から人目を忍んで移動していた男は、新宿区歌舞伎町から大久保へ向かう高架下にて力尽きた。陽が昇り、誰かしらの目についたところで、その泥や煤に薄汚れた姿は浮浪者の類としか移らないだろう)
清人:
全く…酷い匂いだな。
(新宿歌舞伎町付近といえば、風見の知人が拠点を持つ土地でもあり、すぐにどこぞやから知らせが入った。アパートに運び込ませた時には既に怪我の手当てを施した状態で、命に別状はなさそうだ。ひとまず照星にLINEで緊急の呼び出しをかける)
照星:
なーんだー、シッキーがどうしたって?(すぐ来る)
清人:
おお、来たか照よ。まあ上がるがよい。
お前が気にかけていた者が何者かにやられたようなのだが、覚えはあるかね?
シキ:
……う……ここは……
なんかすげぇスースーする……
(っくしゅ)
清人:
お前一度来ただろう、小生の部屋だよ。
そして、なんだか臭うので今ギャッツビーで体を拭いておる。(ごしごし)
幸い傷はそう深くなかったようだが、酷く疲弊して昏睡しておった。
一体何があったのだね?
照星:
シッキー、お久〜!つか、何の匂いだそれw
シキ:
サムイサムイ…
下水歩いてきた上風呂入ってねぇんだ……。あぁ…シトラスの香りに…。
……くそ、まだ眠い(うとうと)
意識…飛ぶ前に…伝えることが……
清人:断る
照星:断る
シキ:まだ何も言ってねえ
清人:
いかにもヤバい話持ってきましたといった出現をされて呑めるか。どうせろくでもない内容であろう?
知らんぞー。小生は知らんぞー。
シキ:
地下のジェイソンがなんたらって言ってただろ…アレだ
照星:
あれ?おま、ジェイソン知ってたっけ?
シキ:
あんたの誕生日を祝いにここに集まった時、地下のジェイソンがナントカって俺ともう一人…化粧で態度が変わる変な奴誘ってた
照星:
あーーー、あん時か!なるほ!んで、ジェイソンがどーしたって?
清人:
我々と関わりなき話を持ってきたわけではない、ということだな。
仕方ない、聞こうではないか。
シキ:
多分、それのことなんだと思うんだが…
関わるとヤバいし、関わらないともっとヤバい。
なんかすげぇ奴らしいんだけどな
清人:
この情報量でわかったのは、お前の語彙力が無いということだけなんだがね?
シキ:
……そいつ。人間じゃねえのか?
どっかのヤバイ組織が地下にいるバケモンを造って、手に負えなくなったのを見棄てて、それを今度はテロリストが狙ってる
照星:
あ、さっきよりわかるよーになったw
シキ;
そのテロリストとやりあったんだが、奴ら…ジェイソンを町に放すつもりらしい。
朔:
………!(ガタッ)
照星:
そもそもなんでんな、テロリストとやり合う事になったんw
シキ:
ネットの掲示板に、金を稼ぐためなら何でもやりますって書いたら釣れた。
地下の話されたから知ってるっつったら目の色変えてな。
ヤバそうだから断ったら俺を消すだのなんだの始めた。
照星:
なんだ!それで、んなボロボロにされたんか!!(大爆笑)
シキ:
雑魚には興味ねえからな…
つまんねえ戦いはしねえ
照星:
それで臭いまま死んだら、カッコわりーだろがよw
朔:
あいつを…外に出しちゃだめだ。
止めないと
照星:
止めるって、どーやって。つか、お前が止めるんかw
朔:
「ぼく」が数十人束になっても、ぎりぎり生き残れるのが一人だけなんだよ。次はだめだろうな……。
あれはね、殺戮本能のみを入力された失敗作の兵器でね、動くものを無差別に殺してしまうんだ。
そんなものが町に出たら…
シキ:
随分と詳しいな。なんなんだこのお子様は?
照星:
(シッキー無視して朔に)つか、そのテロリストは、無差別テロしてーのか?潰してー街があるとかなら、そこに放流するのは有効だと思うけど、その辺に出すだけなら、単に騒ぎ起こすだけだろ。仮に後者だとして、運ぶ手段あるって事だよな。麻酔とか有効って事なんかな...
朔:
使い道は色々さ、警官や軍隊の手をそこへ割かせたり、抗争の敵地に投げ込んだり、軍事兵器として売ったり。
でも、きっと、なにも知らないんだな。
アレは麻酔も毒も…本来は効くはずだったのに、通用しなかったんだ。
運び出すリスクはあまりにも高い…
照星:
もちろん使い道はそれくれーだろけど、シッキーが街に放つっつーから、その街がその辺の街なのか、敵地になんのか、どっちなんだろって思ったん。敵地に放流すんなら俺にゃ、関係ねーw 勝手にあれを制御しよーとして、自分らが持て余して逆にヤられちまうならそれもありじゃね?
朔:
おにーちゃんは「テロリスト」って言ったよね?
テロリストって、つまり無差別攻撃して混乱を起こすひとたちでしょ?
たぶん、ろくなことにならないと思うなぁ…。
製作側の施設に連絡をしても、何かできるとは思えないし…。
だってもう、あれを殺すのに失敗してるんだから。
照星:
そそ。ただし、目的なしのテロリストってのは基本いねーな。だから、なんか目的はあると思うんだよな。混乱させてる間に何かしたいとかよ。いつでもいーって事もないだろから、その辺、かざみんの鳥さんとかが探れねーもんかな。
朔:
その目的を探るのもいいけど、この先そんなことに使われるなら、あれは壊しちゃったほうがいいとぼくは思うんです。
すでに外部にその存在は漏れてるということでしょ?
ジェイソンの。
照星:
どーやったら、壊せそーなん?あれ。つか、あれ生きてんの?w
清人:
あれ、と言われても小生にはわからんのだが、そんな人外なものがおったのか。
シキ:3
このお子様、難しい言葉を使うんだな…さっぱりわかんねえけど、なんか倒せばいいのか。
朔:
あれは、ただの兵器でただの道具だけど、ぼくの兄弟みたいなものなんだ…。
しょーせーがぼくを生き物と思うなら、あれもまた生き物だと思う。
道具も、生き物も、壊れないものは決してない。弱点もある。
兄が無意味な虐殺に使われるのはぼくとしても不本意だ。
照星:
あ、じゃ、ぬっころせばいーんか。
朔:
単純な話、そうなるね。
照星:
なんだよ、初めからそー言えよ!!←
シキ:
最初からそいつ殺す話だったよな
照星:
や、元々はシッキーが、下水臭ぇって話だったよな!?
清人:
どこに対して元と言うておるのかわからんわ。
シキ氏が下水臭くなったのはジェイソンの話を知ったせいであろう、などと言っていくと収拾がつかん。
照星:
麻酔も毒も効かねーんだっけ?鎧とか着てるワケじゃねーか、傷つける事はできんだろ?
朔:
傷はつくけど痛覚が微妙かも。
照星:
痛覚はどーでもいーわ。傷はつくんな?したら、やれるんじゃね?シッキー!←
シキ:
おう、死ぬまで殴りゃいいってことだろ
照星:
おし!行け、シッキー!
シキ:
おう、行って来る
清人:
けが人は大人しく寝ておれ!!